床から荷物を持ち挙げるときの正しい方法についてご紹介します。
まず良くない例です。
①・②の写真は腰が丸まりすぎています。特に①は股関節と膝も曲げていないため腰に負担が掛かり過ぎてしまいます。③は身体から荷物の位置が離れているため、これも腰に負担が掛かってしまいます。
このような状況の時にぎっくり腰が発生することはよくあります。
(×よくない例)
続いて良い例です。
(〇良い例)
①´②´の写真では、腰や背中を丸めすぎず、股関節と膝を曲げて、しっかりしゃがんでいます。また、③´では身体のすぐそばで荷物を持てています。このような方法で行うことで腰への負担を抑えられます。
また、足幅が狭いと腰に負担が掛かりやすくなってしまうため、爪先をやや外に向け、足は肩幅より広めに着きましょう。多くの方の場合はこれが適しています。(※正面から見た様子の写真参照)
しかし、女性の方の中でも骨格上、かなり内股傾向の方は爪先をあまり外に向けすぎると、余計に膝が内に入り腰への負担が増大したり、足幅を開きすぎると股関節の安定性が失われ、これもまた腰に負担が掛かってしまうことがあります。
そのため、内股が強い方は、足幅は肩幅~やや広いくらい、つま先は正面~やや外を向いているくらいで良いでしょう。
そして大事なのが腹圧です。腹筋などの深部筋が先行してしっかり働くことで、腰の負担を抑えてくれます。
①腹圧を意識して、しゃがむときに息を吐きましょう。
②荷物を持ち挙げるときにも息を吐いて腹圧を意識しましょう。
忘れてしまう場合は「よいしょっ」などの掛け声を付けてみましょう。そうすれば自然と息は吐くことになり、脳から物を持ち挙げる準備をするぞという指令が体幹の深部筋に行きます。
【advance】
正常な動きでは、股関節の運動には骨盤・腰椎の動きが連動します。ここで、骨盤-大腿リズム、腰椎-骨盤リズムというものがあります。
・骨盤-大腿リズム(pelvifermoral rhythm)…股関節の屈曲に対して、全可動域を通じて一定の割合(仰向け26%、立位18%)で骨盤が後傾することをいう。
・腰椎骨盤リズム(lumbopelvic rhythm)…立位での前屈動作において股関節屈曲(骨盤前傾)と腰椎の屈曲が同時に起きるが、一定の割合ではなく、前屈動作の前半は腰椎屈曲、後半は股関節屈曲(骨盤前傾)優位となる仕組みのことである。股関節屈曲(骨盤前傾)に対する腰椎屈曲の割合は60~120%とばらつきがある。(※つまり股関節屈曲70°で腰椎屈曲が40°以上起こる)
この仕組みがあるため、しゃがんで荷物を持ち挙げるとき、腰を丸めないように股関節を曲げるように意識しましょうとは良くいいますが、多少は腰は曲がります。
しかし、モーターコントロールの問題で、股・膝関節を屈曲せず完全に立ったままの状態で荷物を持ち挙げようと体幹を前屈したり、多裂筋・腹圧が十分に働かずに動作を遂行すると、腰椎が過屈曲して剪断ストレスが増大します。
そのため、腰は曲げすぎず、股関節をしっかり曲げるように意識して屈むのが良いでしょう。