労災・交通事故

交通事故の直後は、緊張と興奮で痛みを感じにくい状態となっています。外見に大きなケガが見当たらなくても、実は筋肉や靱帯(じんたい)、神経にダメージを受けているケースも多く、事故から数日後に痛み・しびれなどの症状が出ることがあります。

事故直後は軽い症状であったとしても、整形外科で一度きちんと診察を受けていただくことにより症状の慢性化や後遺症を防ぎ、早期の回復につながります。

交通事故に遭われた方へ

交通事故での整形外科受診と治療費

交通事故による被害者のケガの治療費は、原則として「自賠責保険」によって補償されます。

ただし、加害者が任意保険に加入している場合には、一般的に任意保険会社が自賠責分も含めて手続きを代行することになります。その後、加害者加入の保険会社から当院へ保険による治療について連絡がくることになっています。

保険会社から当院への連絡が来た後から、被害者の方は窓口で費用のご負担なく、治療をお受けいただけるようになります。

そのため、保険会社からの連絡がない状態で受診される場合には、確認が取れるまで「預かり金として5,000円」をお預かりしております。

※預かり金は保険会社からの連絡が入り次第、速やかにご返金いたします。

自賠責保険と任意保険の違い

自賠責保険(強制保険)

  • 「自賠法(自動車損害賠償保障法)」により、自動車やバイクを所有した場合、加入が義務づけられている保険です。
  • 補償されるのは「人身事故の被害者のみ(人的損害)」です。
  • 補償額には上限があります。

任意保険

  • 加入者が自由に選択できる保険です。
  • 自賠責でカバーできない部分(対人補償の不足分、物損、車両補償など)を補うための保険です。
  • 実務上、任意保険会社が自賠責保険の請求も代行して行うため、交通事故の際の保険窓口は任意保険会社になることが多いです。

労災保険について

通勤途中や勤務中に起きた交通事故は、条件を満たす場合「労災保険(労働者災害保険)」の対象となります。労災で受診される場合は、初診時に所定の書類をご提出していただく必要があります。所定書類が未提出の段階でのご受診については、預かり金として5,000円を頂き、提出後に返金させていただきます。

  • 勤務中の事故 → 業務災害
    初診時:様式第5号(療養補償給付たる療養の給付請求書)
  • 通勤中の事故 → 通勤災害
    初診時:様式第16号の3(療養補償給付たる療養の給付請求書)

※書類は、できるだけ初診当月内にご用意ください。

※業務上のケガでは健康保険は使えません。ご注意ください。

※提出書類は、厚生労働省のHP*1からダウンロード可能です。

*1(参考)

主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaihoken.html

また、通院途中で病院を変更される場合には、転院先でも労災を継続して使えるようにするため、変更届(業務災害:様式第6号、通勤災害:様式第16号の4)の提出が必要です。

ご不明な点がありましたら、当院スタッフまでお気軽にお問い合わせください。

当院における交通事故診療の取り組み

当院では、交通事故により生じたさまざまな症状に対して、患者様に寄り添いながら診療を行っています。専門用語を避けた分かりやすい説明を心がけ、一つひとつ丁寧に対応いたします。

幅広い診療体制

整形外科を中心に、事故による首・腰・関節のトラブルを幅広く診療しています。必要に応じてリハビリ科や外科とも連携し、診断から治療、回復支援まで切れ目のない対応を行います。また、当院では一般的な治療に加えて、体外衝撃波治療・動注治療(抗菌薬の動脈注射)・再生医療・自費リハビリプログラムなどの新しい治療も取り入れ、患者様の症状に応じたさまざまな治療の選択肢をご提供しています。

丁寧な診断

X線(レントゲン)検査や超音波検査に加え、問診と身体の動きを確認しながら診断を行っています。画像だけでは分かりにくい症状にも配慮できるよう努めています。

リハビリ環境の充実

当院のリハビリテーション科では、さまざまな治療機器(温熱治療器・電気治療器・超音波治療器など)を備えています。また、国家資格を持つ理学療法士がマンツーマンで徒手療法、ストレッチ、筋力トレーニング、姿勢指導などを行い、多彩なプログラムを提供しています。

(画像)当院のリハビリテーション科の様子

保険・書類サポート

自賠責保険・労災・健康保険など複雑な手続きについて、スタッフが丁寧にご案内します。また、交通事故治療で必要となる診断書や各種提出書類の作成にも対応しています。

交通事故でよくある症状・疾患

交通事故でよくみられる症状・疾患には次のようなものがあります。

気になる症状が現れたら、早めの受診をおすすめします。

むち打ち症(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)

交通事故(特に追突事故)の衝撃で首に強い負担がかかり、筋肉や靭帯(じんたい)が損傷することで起こります。事故直後は軽い違和感程度でも、時間が経つにつれて首の痛みやこわばり、肩・背中の張り、頭痛が強くなることがあります。人によっては、しびれ・めまい・吐き気などが出ることもあります。(外傷性頚部症候群)

放置すると長引くことがあるため、早めの受診と適切なリハビリが大切です。

腰の痛み(腰部捻挫・腰痛)

シートベルトや事故の衝撃により腰に負担がかかり、筋肉・靭帯が損傷することで、腰の痛み、動かしにくさが現れます。(腰椎捻挫)

すでに腰椎椎間板ヘルニアをお持ちの方では、事故をきっかけにヘルニアが悪化して、足のしびれを伴うこともあります。無理せず、すみやかに医師の診察を受けるようにしましょう。

打撲(だぼく)・挫傷(ざしょう)

交通事故の衝撃で、体を強く打ちつけた場合に起こるケガです。

  • 皮膚や皮下に出血や腫れが出るもの……打撲(打ち身)
  • 筋肉や靭帯まで損傷が及ぶもの……挫傷

見た目では打撲と挫傷の区別がつきにくいため、症状が強い場合は医師の診察を受けることが大切です。また、切り傷を伴う場合でも整形外科で処置は可能ですが、広い範囲や深い傷など専門的な外傷処置が必要な場合には、外科での診療をご案内いたします。

骨折

事故の衝撃で手足や肋骨などの骨折が起こることも少なくありません。小さなヒビ(不全骨折)であっても早期に発見して治療することが大切です。骨折は適切に固定しないと、骨がずれたまま治ってしまい、変形や関節の動きの制限、慢性的な痛みなどの後遺症が残ることがあります。適切に固定を行うことで、骨は正しい位置で治癒しやすくなり、痛みが和らぎ、日常生活への影響を減らせる可能性があります。さらに、骨が安定することでリハビリもスムーズに進められ、後遺症予防にも役立ちます。

頭部外傷・脳震盪(のうしんとう)

頭を打ったり強い衝撃で頭が大きく揺さぶられたりすることで、頭部外傷が起こることも少なくありません。中でも交通事故でよく見られる頭のケガのひとつに「脳震盪(のうしんとう)」があります。脳震盪とは比較的軽度の脳の外傷で、一時的に意識を失う、直前の記憶があいまいになる、頭痛や吐き気、めまいなどの症状を伴うことがあります。通常、脳自体に損傷がないので、多くは安静により時間とともに自然に回復する場合があります。しかし、頭のケガは見た目で異常が分からないケースも多いため、症状の有無や重症度にかかわらず、医療機関を受診することが望ましいです。当院では外科を併設しており、精密検査が必要かどうか不安な場合にもご相談いただけます。

※診察の結果、精密検査が必要な場合には、提携病院などをご紹介します。

めまい・吐き気・耳鳴り・全身のだるさ(バレー・リュー症候群など)

事故による首の損傷がきっかけで、自律神経に影響が及ぶと、めまい・吐き気・耳鳴り・全身のだるさといった症状がみられることがあります。これらは「自律神経失調型むちうち(バレー・リュー症候群)」と呼ばれるタイプのむちうちで起こることがあります。

事故直後には自覚しにくく、数日経ってから「なんとなく不調が続く」と症状に気づくこともあります。事故後にめまいや吐き気、全身のだるさなどの不調を感じた場合は、まず整形外科へご相談ください。

※必要に応じて、耳鼻科や神経内科など他の診療科とも連携して対応いたします。

よくある質問

事故から数日経って受診しても大丈夫ですか?

はい、大丈夫です。交通事故の症状は直後には軽くても、数日経ってから首の痛みや頭痛、しびれなどが出てくることがあります。受診が遅れると事故との関連が証明しにくくなる場合があるほか、受傷から早い段階で受診すれば、症状の進行を防ぎやすいこともあるため、少しでも気になる症状があれば、早めに整形外科にご相談ください。

整骨院や接骨院との違いはなんですか?

整骨院や接骨院でもマッサージ・電気治療などの施術は受けられますが、診断書の発行、X線(レントゲン)検査、MRI検査は行えません。交通事故の補償を受けるためには、医学的な診断と経過の記録が必要です。そのため、まず整形外科で受診・診断を受け、そのうえでリハビリをどう進めるかを判断することが大切です。

リハビリはいつまで続ける必要がありますか?

必要な期間はケガの程度や回復の速さによって異なるため、数週間~数か月間と個人差があります。痛みがなくなった時点で治療を終わらせるのではなく、再発の不安をできるだけ減らし、日常生活に支障が少ない状態に戻すことを目指します。医師や理学療法士と相談しながら、患者様に合った通院ペースを決めていきましょう。

加害者本人の治療費はどうなりますか?

自賠責保険は「被害者を救済するための保険」ですので、加害者ご自身の治療には使えません。加害者の方が加入している任意保険に「人身傷害補償」もしくは「搭乗者傷害保険」が付いている場合には、その範囲で補償を受けられることがあります。そうした補償がない場合には、健康保険を利用して自己負担分をお支払いいただく形になります。任意保険の補償もなく、健康保険も使わない場合には、全額自己負担(自費)となります。